3.カボチャinトンガ
3-1.トンガって?!
トンガのカボチャの話に入る前に、トンガについて説明します。
●概要
・ 正式国名 トンガ王国(The Kingdom of Tonga)
・ 人口 10万1991人(2006年)大半がポリネシアン系
・ 面積 699ku
・ 首都 ヌクァロファ(Nuku’alofa)
・ 言語 トンガ語、英語
●地理・気候
トンガは南太平洋に浮かぶ大小170余りの島々からなり、日付変更線のすぐ西に
位置しています。そのため世界の中で一番早く朝を迎える国の一つでもあります。
熱帯性気候に属し、一年を通して高温多湿ですが、常に海からの風が吹きわたり、
蒸し暑い日本の夏よりも過ごしやすいです。また南半球に位置しているので、6〜
10月は冬にあたり、朝晩は少々寒いくらいです。11〜3月は雨季で雨が多く、ハ
リケーンの季節でもあります。
★カボチャ農家紹介★
ヌクアロファ市内で親子2代にわたってカボチャを輸出している、ニシ・ミノルさん(現カボチャ協会の会長)にカボチャにまつわる様々なことを教えていただきました。ミノルさんのお父さんが国から300エーカーの土地(甲子園球場約32個分)を借りているそうです。引退したお父さんの後を継いだミノルさんは、カボチャだけでなく、ズッキーニやジャガイモを育て、さらに副業としてレンガや農薬の販売な
ど積極的に新しいビジネスに取り組んでいます。
<図1:トンガの位置関係>
収穫したカボチャを手に持つミノルさん →
3-2.栽培から輸出まで
ここでは、トンガ国内でカボチャがどうやって栽培されているのか、またどのよう
な経路で日本まで運ばれてくるのか、そして最終的にどのようにして私たちの身近な
スーパーまで運ばれているのかを明らかにしていきたいと思います。
この栽培〜出荷過程は、カボチャ農家のニシ・ミノルさんにインタビューした結果
をまとめたものです。
栽培年間スケジュール
冬期
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4月
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土に栄養を入れ始める。
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6月
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種を日本の会社から購入。
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7月
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種を蒔き、わずか6日後に発芽(NZでは12日はかかるそうだ)。
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8月〜10月
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農薬散布を行う。
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雨季
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10月〜11月
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収穫する。
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12月
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4月まで土を休ませる。
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*農薬散布
1シーズンに4回(4種類)散布します。農薬は中国から購入します(この農薬は
世界中、アメリカやアフリカ、ヨーロッパで使われているそうです)。農薬散布の時
間帯はカボチャの温度があまり上がらない、早朝か深夜に行います。
今年2009年からの挑戦として、オーガニックスプレーの取り組みがあります。こ
れは自然のもので農薬を作ってみようというものです。液体の色は茶色で、中身はパ
インアップル・バナナ・オレンジ・ニンジン・ポテト・トマト・大根・イースト・白
砂糖。これをすべて小さく刻み、水を加えます。それを冷蔵庫で1ヶ月寝かせたら完
成です!日本の会社の方が、トンガの方に教えたのがきっかけで、もし成功したら農
薬費の節約にもなり、身体にいいカボチャも作れるという一石二鳥なのです。
*収穫作業
一日がかりで一番初めに植えた農場から収穫を開始します。作業をする人数は労働
が多いときで100人を超えるときもあるそうです。みんな手作業で一人一人がはさ
みを持ち、カボチャを切っていきます。そしてそれをある程度一箇所にまとめながら、
進んでいきます。
カボチャを切る人のほかに、その集めた所まで移動してベルトコンベアーに乗せて
いく人もいます。ここからは機械が活躍します。ベルトコンベアーの流れの先に、ビ
ンと呼ばれる木でできた箱がセットされているので、そこにカボチャがゴロゴロと落
ちていきます。ざっと勘定しても100個くらいは入ります。いっぱいになると新し
いビンを持ってきて入れていくという作業を繰り返します。それと同時に車に取り付
けられているトランシーバーをつかってオフィスにいる従業員と連絡をとりながら、
あと何個ビンが必要かを指示します。
*出荷作業
農場で採れたカボチャをまずミノルさんの会社まで運びます。そこでひとつひとつ
重さを量ります(1.25〜2.70kg以内なら出荷可能)。それを新しく作っておいたビ
ン(木の板を複数組み合わせて作られた箱)に詰め替えて、それをトラックに積み込
み港まで運びます。1台のトラックで22トン運ぶことができますが、会社にトラッ
クが1台しかないことに加え、合計1,100トンも出荷するので、1往復1時間もかか
る会社−港間を50往復もしなくてはなりません。そしてコンテナにビンを積み込む
前に、トンガの農業大臣本人が品質の最終チェックをします。コンテナに積まれたカ
ボチャはNZ経由で日本まで約3週間かけて運ばれます。
2007年まではカボチャ出荷量は10,000トンを超えていました。そのためコンテナ
ではなくカボチャ専用船で日本まで運んでいました。専用船だと約2週間で日本に運
ぶことができたので、カボチャが腐ったりするリスクも今よりは少なかったそうです。
↑ビンに積み込まれるカボチャ ↑左:韓国向け 右:日本向け
ミノルさんの育てているカボチャのうち、8割が日本へ、2割が韓国へと出荷され
ています。右上の写真のように、韓国向けは日本向けと比べて小さい方が好まれるそ
うです。
3-3.カボチャ農家の現状
カボチャを育てるようになってからピーク時の1995年は、600〜700戸もの農家がカボチャを栽培し、15の貿易会社がカボチャを取り扱っていましたが、現在かぼちゃを育てているのは4農家のみです。貿易会社も4つしか残っていません。ここまで減少した原因の1つは、カボチャ栽培にかかる費用に対して市場価格が年々下がり、利益があまり出なくなったことがあげられます。なぜカボチャ栽培に費用がかかるのかというと、日本向けのカボチャを育てているので、日本の種を輸入しなければならないからです。また農薬もトンガでは手に入れることができないので、中国から輸入しています。耕作や収穫に使う機械など、土地以外はすべて輸入しているというのが現状なのです。だから毎年銀行からお金を借りて栽培を始めるそうです。年によってはカボチャが不作だったりするので、カボチャ以外の作物(タロイモやキャッサバ、ジャガイモなど)を同時に栽培したり、日干しレンガやサンゴを砕いた砂など、建築で必要とされる商品を売るといった副業をしている農家もあります。最近はニュージーランドの会社から日本向けの「オクラ」を作って欲しいと頼まれたカボチャ農家もいるそうです。
カボチャ農家の人たちは、カボチャ協会に所属しており、年に一度(最近になって頻度が減った)情報交換を行っています。